GS18 T を走行車に装着してオートレコードを実施。測量技術の画期的な革新を実感

Customer Case Study - 事例

Shinwa

北海道・新ひだか町に本社を置く新和測量株式会社は、1999年から足かけ22年にわたり、GNSS測量に取り組んできた。技術の進化とともに、スタティック測量、RTK測量、VRS測量を手がけ、作業工数削減、作業時間短縮、作業人数削減に大きな成果をあげている。2020年には、GNSSRTKローバー「Leica GS18 T2台と、GNSS受信スマートアンテナ「Leica Viva GS161台を追加導入。GS18 Tは、車に装着して走行しながら座標値の自動取得をするオートレコード機能も積極的に活用。「利益率を確保しつつ、納期を厳守する」という同社のビジネスポリシーを実現し続けるために、GNSS機器を戦略的に駆使している。

GNSS技術の進化と共に歩み使いこなしノウハウを蓄積

新和測量株式会社は、1964年に設立され、60年近い歴史を重ねてきた。主要業務は、14級の基準点設置と用地測量・境界確定であり、北海道、国土交通省などが発注する公共測量が100%を占める。帯広市と富良野市にも支店があるため、本社のある日胆地区(日高・胆振)のみならず、道内の広範囲な市町村、公共機関の仕事を請け負っている。

「公共測量で最も重要なのは『納期厳守』です。国の規準の精度を守り、当初の約束どおりの納期に提出する。その地道な積み重ねで、お客様との信頼関係を築いてきました」と、新和測量株式会社 技術次長の高藤盛氏。

「ただし、要求どおりの仕事は『できてあたりまえ』です。納期を前倒しにして、発注機関の担当者が余裕をもって動けるようにするなど、プラスアルファの努力を積極的にやっていかなければなりません。GNSS測量にも、そういう思いで早くから取り組んできました」と、測量課課長で測量グループリーダーの下山陽介氏は補足する。

新和測量が初めてGNSS測量を行ったのは1999年にさかのぼる。以来22年間にわたって、測量課では、GNSS測量を活用し、工夫して、利用形態を進化させてきた。同時に、代表取締役社長の福田今日児氏も、この方針を後押ししてきた。

1999年当初は、衛星1周波を受信するGPS機器を5台導入して、基準点のスタティック測量1をスタートさせた。
次に
2007年、ライカジオシステムズのGNSSSystem 1200シリーズを2台導入して、RTK測量2を行うようになった。

「衛星を2周波受信できるようになり、作業効率が大幅に向上しました。2009年には海岸の深浅測量にも使って、GNSS測量は汎用性が高いことを実感しました」と下山氏。ちょうど公共測量でRTKを採用し始めた転換期であり、道内全域でGNSS案件が急激に増加した。機器の台数が足りなくなり、2012年にライカジオシステムズのViva UnoモデルGS053台、2014年にはLeica Viva GS08plus GNSS2台、立て続けに追加導入した。

その後、他の機器も導入・増設し、5種類の衛星が受信可能になった。そして2020年には、VRS測量3ができる体制を整えた。
「主に
RTKを目的とした超小型GNSS機器は、作業者の体力的疲労を軽減してくれる一方で、Bluetooth仕様のため、無線が最大300mぐらいしか飛ばせません。地形、地物などの影響により無線が届かないこともあります。今後のビジョンを考えると『やっぱりライカ製品だな』という結論になり、2020年、GS18 T2台と、GS161台追加購入しました」と下山氏は語る。

1スタティック測量: 3台以上のGNSS受信機を据えて、20分から数時間、全点同時に衛星からの電波を受信・記録して解析する方式
2 RTK測量:リアルタイム・キネマティック(Real Time Kinematic)。GNSS機器1台を固定局とし、固定局から移動局へ観測データを送信して両者の差を解析する方式
3 VRS測量:仮想基準点方式(Virtual Reference Station)。ジェノバ社のネットワーク型GNSS補正データ配信サービスから取得した仮想基準点データを使用することで、固定局を置かず、移動局1台でGNSS測量可能

「買い替え」ではなく「増強」していけるライカ製品ファミリー

GS18 Tの通信機能はラジオ無線の仕様であり、1km1.5km離れた機器へ楽に飛ばすことができる。RTKでもVRSでも、スピーディかつ臨機応変に実行できるのだ。

「測量で一番大変なのは、気泡管をにらみながら機器を据える作業です。通信が長距離対応であれば、固定局の移動・再設置の回数が減り、現場作業者をストレスから解放して、作業時間も短縮できます。『固定局と移動局の通信距離が作業効率を左右する』と言っても過言ではありません」と下山氏は指摘する。

しかも長距離対応であれば、固定局と移動局を「11」の合計2台稼働ではなく、「1対 複数」にして、多人数で作業を進めることが可能だ。
たとえば
1.5km圏内に測量すべき圃場(畑)が34つ点在している場合、1つの固定局を使って68人の作業員が同時に作業すれば速い。新和測量には使用できるGNSS機器が15台もあるため、本社・支店から多人数が集まって全員がうまく動ける段取りを組んでおき、一気に測量を完了させると、1人で何日も同じ現場に張り付くよりも圧倒的に効率が良いのである。

さらに下山氏は、「ライカ製品は、2007年に買った1200シリーズがまだ現役で使えているくらい、頑丈で壊れない。また、最新機種と古い機種が確実にリンクできるので、長期にわたって使っていけます。『新しく買い替える』ではなく、『増設・増強』の感覚でライカの製品ファミリーを買い足してきました」と言う。

「台数が増えるほど、測量の効率が上がる」という新和測量のGNSS活用の基本姿勢と、長期にわたって使い続けることを前提にしたライカジオシステムズの製品設計思想とがぴったりマッチングしたといえるだろう。

既設基準点を探す工程でもRTKVRSの威力を痛感

現在、新和測量では、仕事の89割でGNSS測量を使っている。トータルステーションのみを用いる測量に比べて、格段に作業時間を短縮して、人件費も削減できるからだ。

「たとえば、面積3haというごくふつうの用地測量の場合、現地で既設基準点を探すところから作業が始まります。従来は、国交省提供の図面を入手して、そこに記載されている既設基準点を現地で探していましたが、34人がかりで3日かかるなど、非常に時間を取られる作業でした。ところがVRSRTKだと、『ここだ』とピンポイントでわかります。1人が1015分作業するだけで必ず既設基準点に行き着きつくのです」と高藤氏は説明する。

その後の選点、現況測量、境界確認・復元、事業用地界設置・点検といった作業もすべて、VRSRTKを用いることで大幅に時間短縮できる。
「トータルステーションだと
34人で10日かかる仕事を、GNSSなら1人で12日程度で完了させられます。VRSは通信費が年間2526万円もかかりますが、人件費削減効果はすぐにそれを上回るほど大きい」と下山氏は語る。

ただし公共測量ではGNSSのみで完結する仕事は少ない。仕上げや精度確認はトータルステーションを用いるなど、GNSSとトータルステーションを上手に組み合わせて、高精度維持と作業効率アップの両立を図っている。


走行車に装着してこそ活きるGS18 Tのオートレコード機能

GS18 Tのオートレコード機能も最大限に活用している。車に装着して走行しながら座標値の自動取得を行うことで、大幅な作業時間短縮を達成できた。

2014年に導入したGS08plusの時から、車に装着してオートレコードを使っています」と下山氏。

まずは、トータルステーションで圃場を測量して得られたデータで三次元コンター図を作成し、オートレコード計測から作成した三次元コンター図と比較して、高い精度で一致することを確認。走行車に搭載したオートレコードの精度を自らの手で実証したうえで、自信をもって実務に利用してきた。

「ただしGS08plusは計測のタイミングを『時間』でしか設定できなかったため、秒数を設定したうえで、走行する車の時速をもとに自分たちで移動距離を計算して、秒間隔の計測結果と突き合わせるという手間をかけていました。ところがGS18 Tのオートレコード機能は一段と進化していて、計測のタイミングを従来の『時間』に加えて、『移動距離』、『高低差』でも設定できます。車に装着しての座標自動取得が飛躍的に使いやすくなりました」と下山氏。

しかもGS18 Tには、チルト補正機能がある。垂直方向の傾きを手作業でキャリブレーションすることなく自動的に調整するため、上下左右に振動しながら走行する車でのオートレコード精度にも信頼性が高まった。

GS18 Tのオートレコードによる地形測量の事例をひとつ、具体的に説明しよう。

「この案件は、水はけが悪い圃場に排水管(暗渠)を設置するための農業用土地改良に伴う地形調査で、測量対象は面積2.58haでした」と下山氏。

トータルステーションであれば、2人で組み、5m程度の間隔で行ったり来たりを繰り返す。この面積だと1520往復するので3時間かかるところだ。

RTKの場合は、往復作業をするのは1人で済みますが、作業時間はトータルステーション同様の3時間か、それ以上かかります。
ところが現場に行ってみたら牧草を刈った後だったので、
GS18 Tを車に装着してオートレコードで計測することに決めました。圃場表面を変化させないことが基本ですから、もしも刈り入れ前だったら、車で乗り入れることはできないところでした」と下山氏は語る。現場の状況によっては、タイヤ痕を残したりしないために、自動車よりも軽いゴルフカートや四輪バギーを使ったこともあるという。

計測のタイミングは、「平面移動5m間隔」を基本に、「5m移動する間に20cmの高低差があればそこも測定する」という設定にした。時間、距離、高低差の3要素をうまく組み合わせて設定できるのがGS18 Tなのだ。

Captivate
車に搭載してオートレコードを利用したときのGS18 T内蔵ソフト「Leica Captivate」の画面。座標値自動取得のタイミングを、平面移動距離と高低差の2要素で設定したところ


また、先行機種のGS08plusでは時速6kmで慎重に走行していたが、チルト補正機能のあるGS18 Tは時速10kmで測定した。
その結果、運転者
1人で、約550点の座標値を30分で取得できた。
「車で走行しながら座標値の自動取得をすることは、測量技術の画期的な革新のひとつだと思います。もっと活用したいし、この威力をもっと幅広い方々に知っていただきたい」と下山氏は意欲的に語る。

Captivate
オートレコード計測の軌跡図をCaptivateに表示させたところ。Captivateは、文字が大きくて見やすい。またコマンド操作不要で、やりたいことがアイコンタッチやメニュー選択だけで直観的に操作できるため、使用経験が少ない作業者にもわかりやすいとのこと

Explanation_Figure4
走行車に装着してのオートレコードで計測した結果を整理した平面図。トータルステーションで計測した結果とほぼ同等の高い精度を得られる


GNSSは「利益率を担保しつつ納期厳守」するための経営戦略ツール

GNSS測量は、「工数削減」、「作業時間短縮」、「作業人数削減」などに大きな成果をあげてきた。

たとえば、トータルステーションでは3人がかりで3日かかると見積もられた用地測量を、RTK測量を使って1人で1日で完了させたことがある。GNSSを使わないメンバーが56日かけていた仕事を、GNSSを使いこなすメンバーが2日で仕上げたこともある。

「こうした工数削減ができるからこそ、現地状況や天候などに様々な支障や変動があっても、『納期』を常に守ることができるのです。しかも、利益率を確保しながら、納期厳守ができる、これもGNSSがあるからこそです」と下山氏は言う。

新和測量はいま、売り上げ増大・受注金額増大の視点だけでなく、利益率向上を強く意識してビジネス活動の質を高めようとしている。納期を順守するためには、予定外の大人数を投入しなければならない事態もときには発生するが、GNSS測量を使いこなすことで、人件費の無駄な増大を抑制しながら、利益率確保と納期達成を両立させてきたのだ。価値の高い仕事、発注者からプラス評価される仕事、新規領域への挑戦など、今後も新和測量の経営戦略を展開していくうえで、GNSSはなくてはならない右腕的存在である。

Productivity Compare_Figure 5

GNSSの技術進化を幅広くアピールして制度改革にも期待

今後の目標は2つある。

1つは、社内でGNSSを使いこなせる人材を増やすことだ。
15台あるGNSS機器の一部を帯広と富良野の2支店にも配備し、社内研修会を開いたり、現場作業のときには本社の高藤氏や下山氏が同行してOJTで操作指導をしたりしている。

「社員の間から『こんなに良いものがあったんだ』という驚きの声もあがっています。さらに進んで、『こんなに短時間で、従来と同レベルの精度を取得できる手段があります』と、各自のお客様へ働きかけてもらいたいと考えて取り組んでいるのです」と高藤氏。

もう1つの目標は、ターゲットをさらに広げて幅広い人々にGNSSの威力を知ってもらい、社会的な認知度を高めて、公共測量でも適用領域を拡大させることだ。

「現在、公共測量ではGNSSの観測時間(エポック)として110秒以上とか、5時間以上動かさないとか、非常に長い時間を定めています。GNSSの精度が信用されていないからですね。けれどもGNSSの技術も機器もここ数年で格段に進化しました。観測時間をもっと短くしても、高精度なデータを取得できるようになってきていることをもっと知ってほしい」と下山氏。

測量作業規程の見直しや制度改革が積極的に進められれば、GNSS測量は急激に普及し、測量作業の効率化や技術革新が大きく進むと期待される。いち早くデジタル化が進んでいる土木・建築業界とのデータ連携など、新しい可能性も開けていくに違いない。




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世界中のお客様が当社の様々なソリューションを活用してスマートな変革を起こしている様子をご覧ください。
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